猫背は脳梗塞のリスクを高める!?「膝立ち」で正しい姿勢をマスターしよう!

2018年6月14日

デスクワークで普段から猫背気味に…
姿勢が悪く老けて見られがち…

このように猫背などの姿勢の悪さでお悩みの方はいませんか?

猫背は、腰痛や肩こりだけでなく、むくみや肌荒れの原因にもなってしまいます。
また、太りやすくなったり、バストが垂れたりと、女性の大敵ともいえるもの。

猫背が及ぼす悪影響の中でももっとも恐ろしいのが脳梗塞です。
脳梗塞は、日本人の死因でも高い順位にあるものとして知られています。

今回は、猫背が及ぼす影響についてご紹介します。
正しい姿勢を手に入れるコツもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

 

正しい姿勢と猫背の違いは背骨にあり!

一般的に、背中が猫のように丸まった悪い姿勢を私たちは「猫背」と表現します。
では、猫背になると体はどのような状態になるのでしょうか?

まずは、健康な状態の背骨を見てみましょう。

通常、背骨は、首から腰にかけてまっすぐ一直線になっているわけではありません。
このように、首は前弯、背中は後湾、腰は前弯しており、横から見るとS字状になっているのです。
カーブを描いているからこそ、外部からの衝撃をうまく吸収できるようになっています。

これは、人間が本来持っている生理的湾曲と呼ばれるものです。

次に、猫背の人の背骨を見てください。

生理的湾曲が崩れ、S字のカーブが強くなっていることが分かると思います。
この状態では、肩や頭が前に突き出し、体中の筋肉や臓器に負担がかかってしまいます。

ちなみに、このようにS字カーブがなくなり、首から腰に掛けてまっすぐになっている状態を「平背」といいます。
この状態は、一見姿勢が良いように見えますが、こちらも体にかなりの負担をかけてしまうものです。

 

猫背の種類

実は、猫背といっても、曲がっている部位によって、大きく4つの種類に分けられます。



1.首猫背
2.背中猫背
3.腰猫背
4.腹猫背


【猫背の種類】

1.首猫背

デスクワークで首や肩がよく痛くなるという方は、首猫背が原因かもしれません。

首猫背とは、頭が前に突き出し、首を中心に丸くなっている状態です。
「ストレートネック」とも呼ばれています。

首猫背の原因としては、スマホやパソコンなどが考えられています。

頭の重さは、成人で約5kg。
頭が前に出たり、うつむいたりすると、その負担はさらに大きくなります。

ある研究では、首の角度を30度曲げると18kg、60度曲げると27kgもの負担がかかることが明らかになりました。

The weight seen by the spine dramatically increases when flexing the head forward at varying degrees.
Loss of the natural curve of the cervical spine leads to incrementally increased stresses about the cervical spine.
These stresses may lead to early wear, tear, degeneration, and possibly surgeries.
While it is nearly impossible to avoid the technologies that cause these issues, individuals should make an effort to look at their phones with a neutral spine and to avoid spending hours each day hunched over.

訳:頭を前に傾ければ傾けるほど、脊椎にかかる負担は劇的に増加します。
頸椎の自然なカーブがなくなると、頸椎へのストレスが徐々に増していきます。
これらのストレスは、組織の摩耗や裂傷、変性を早め、外科手術につながる可能性もあります。
このような問題を引き起こすテクノロジーを使わないようにすることは不可能に近いですが、私たちは、頸椎が自然なカーブになるように携帯電話を使ったり、背中を丸めた姿勢で1日何時間も過ごすことは避けたり、努力をするべきです。

(引用:Kenneth K. Hansraj『Assessment of Stress in the Cervical Spine Caused by Posture and Position of the Head』)

頭が前に突き出し状態のため、見た目が悪くなってしまうのはもちろんですが、首猫背の影響はそれだけではなく、次のようなトラブルを引き起こします。

・首や肩のコリ
・頭痛
・眼精疲労
・目のかすみ
・腰痛

特に、慢性的な首や肩のコリに悩まされることが多く、そこから頭痛がひどくなることも多いようです。

また、呼吸器系にかかわる神経に負担がかかるため、風邪をひきやすくなったり、息苦しさを感じたりする場合もあります。

ひどくなると、首部分にヘルニアが起こすこともあります。

まずは、鏡でこまめに自分の姿をチェックしてみましょう。
もし、頭が前に突き出しているようだったら、しっかりと顎を引くように意識しましょう。

 

【猫背の種類】

2.背中猫背

背中が丸まり、肩が内側に入り込んでいる状態を「背中猫背」といいます。
これは、一般的な猫背のイメージで、多くの方が想像するのがこのタイプです。

肩こりの原因になるだけでなく、消化不良や胸やけ、胃痛を引き起こすこともあります。

特に、デスクワークなどの座り仕事の人やよく腕を組むという人に見られ、日本人に多いのがこの背中猫背です。

原因としては、肩甲骨周りの筋肉が固まり、肩が正しい位置に来ていないことが考えられています。

そのため、胃や肺が圧迫され、呼吸が浅くなり、体内に取り入れる酸素の量が少なくなってしまいます。
すると、疲れやすくなったり、集中力や内臓の機能が低下したりと、メリットは一つもありません。

 

【猫背の種類】

3.腰猫背

腰の部分が丸まった状態を「腰猫背」といいます。
座り仕事の人や足を組む癖のある人に多く見られるタイプです。

腰猫背は、腰回りを圧迫するため、腰痛やヘルニアの原因にもなってしまいます。
また、泌尿器系や生殖器系の臓器に負担がかかり、便秘や下痢などの便通の乱れ、生理痛、冷え、むくみを引き起こすことも考えられます。

いすに座るときに、背中だけを預けて浅く座る人は注意が必要です。

 

【猫背の種類】

4.腹猫背

「腹猫背」は腰が前に反り、お腹が前に突き出た状態です。

この状態は、反り腰とも呼ばれ、正常な背骨よりもS字のカーブが強くなっているタイプです。
猫背に見えないことから隠れ猫背ともいわれています。

特に、ハイヒールを履く女性や妊娠中の女性に多く見られます。
全体的にはスリムなのにお腹がポッコリと出たり、ヒップが垂れさがったり、見た目に悪い影響を引き起こします。

上半身を支える大腿後面の筋力が弱く、前に傾いた骨盤とのバランスをとろうと、腰を反らすことが原因のひとつです。

(参考:【医師監修】そもそも猫背とは?猫背の4つの種類とよくある症状―ヘルスケア大学)

 

日本人の約6割が猫背!?

猫背でお悩みの方は多いと思います。
では、実際、日本人の何%が猫背だと思いますか?

2010年、日本のスポーツ器具メーカーのエバニューは、20歳から59歳の男女500人を対象に姿勢に関する意識調査を行いました。

この調査の結果、驚くべき事実が判明しました。

なんと、対象となった500人のうち約9割がなんらかの姿勢の悪さを実感していたのです。
逆に、自らの姿勢をきれいだと回答した人は、4.8%とかなり少ないことが分かります。

姿勢の悪さを実感している人の中でも特に多くの人の悩みのタネとなっているのが、猫背です。

この表を見てもわかるように、60%近くの人が猫背を自覚しているようです。

また、猫背に悩んでいる人を年代別に見てみると、50代では51.9%であるのに対し、40代は55.8%、30代は60.5%、20代は62.8%となっています。
つまり、若い人ほど猫背に悩んでいるのです。

もっとも猫背に悩んでいるのは、20代の女性で、64.6%でした。

特に、若い女性の「猫化現象」が進んでいるようです。

(参考:エバニュー、姿勢に関する意識調査、20代女性の64.6%は猫背で若い女性の「猫化現象」進む―マイライフ手帳@ニュース)

 

猫背の原因

猫背は、私たちのライフスタイルが大きく影響しています。
猫背になりやすい生活習慣を考えてみましょう。

①スマホ・パソコン

まず、挙げられるのが長時間のスマホやパソコン作業です。
私たちの生活に欠かせないものとなっているこれらの機器は、猫背の原因として最も大きなものと考えられています。

パソコンで作業しているときの姿勢を思い返してみてください。
どうしても自然と背中が丸くなりがちです。

特に、スマホは画面が小さいため、肩が丸まってしまいます。

デスクワークの人や暇さえあればスマホをいじってしまう人は、気づかないうちに猫背が悪化する可能性もあります。

②筋力低下

姿勢を保つ役割を持つ背中の筋力が弱くなると、猫背になることがありますが、猫背の原因となるのは背中の筋肉だけではありません。

実は、骨盤を支える筋肉も関係しているのです。

骨盤周りの筋肉は、正しい姿勢の維持と深いかかわりのある筋肉です。

また、下半身を使った動作とも関係があり、普段あまり歩かないという人は、年をとるにつれて衰えていきます。

しかし、営業など外歩きが多いという方も油断はできません。
普段から歩くときに意識的に足を上げる人は少なく、ほとんどの人は歩幅を狭め、疲れないように足を上げずに歩いています。

このような歩き方では、骨盤周りの筋肉があまり使われないため、衰えていってしまうのです。

骨盤周りの筋肉のひとつである大腰筋は、脚骨と腰骨をつなぐ筋肉です。
この大腰筋が弱まると、骨盤が後ろに倒れる形になります。

体の後ろ側に重心が移ると、全体のバランスをとるために背中が丸まり、猫背になってしまうのです。

③柔軟性低下

筋肉の柔軟性が低下することも猫背の原因のひとつです。

特に深く関係するのが、「大胸筋」です。

大胸筋とは、腕を上げたり、横に開いたりするときに使う筋肉です。

しかし、最近の生活環境ではこの動作が減ってきています。

特に、デスクワークで長時間パソコンを使う方の場合、体の前側の筋肉が常に委縮した状態になります。
その状態が続くと、筋肉の柔軟性が低下し、肩甲骨が前にひきつけられ猫背になってしまうのです。

④クセ

猫背を助長させる癖として、次のようなものがあります。

・いすに浅く座る
・足を組む
・うつ伏せで寝る
・頬杖をつく
・カバンをいつも同じ法で持つ
・横向きで寝る
・どちらかの足に重心をかけて立つ

⑤ストレス

過度のストレスは、猫背の原因のひとつです。

ストレスを感じると、筋肉が緊張した状態になります。
そのため背中が丸まり、猫背になってしまうのです。

また、ストレスや不安を抱えていると、自然と顔が下を向きます。
これも猫背の原因だと考えられています。

「職場での人間関係も良いし、ストレスなんてあまり感じてない」という人もいらっしゃるでしょう。
ストレスと聞くと、人間関係の悩みや不安による精神的なストレスを想像する人が多いようです。

しかし、過労やケガ、骨盤のゆがみなども体や脳にストレスを与えてしまいます。
また、排気ガスや栄養不足、さらには、音や光、温度なども身体的なストレスとなります。

 

本当に猫背は楽なのか?

しかし、頑張って姿勢を正そうとしても疲れてしまう…なんてことありませんか?

最初の方にご紹介したエバニューの調査によると、猫背を自覚している人の62.4%がキレイ・正しい姿勢を維持できる時間を3分以下と回答したようです。

さらに、その際の疲労度を調べた結果は次の通りです。

この表を見てもわかるように、24.2%がとても疲れやすい、58.7%が疲れやすいと感じています。
猫背の人が正しい姿勢を維持しようとすると、8割以上の方が疲れを感じるのです。

やはり、普段から猫背でいるのは、その姿勢の方が楽だからというのも理由として挙げられます。

座っているときの姿勢を考えてみましょう。

座っているときに、体の力を抜いて、リラックスしている人が多いと思います。
電車でも立っているよりも座っている方が楽だと感じる方がほとんどでしょう。

しかし、座っている状態でも体の重さは変わりません。
正しい姿勢でないと、椎間板に大きな負担がかかってしまうのです。

姿勢による椎間板にかかる圧力を調べた実験によると、次のような結果になりました。

(出典:ナッケムソン「姿勢の変化による椎間板内圧の変化」より
NACHEMSON A :THE LUMBAR SPAIN.AN ORTHOPAEDIC CHALLENGE.SPAIN 1:59-71,1976)

この表によると、立っているときの椎間板の内圧が100であるのに対し、座ったときは140となっています。
また、座って前傾姿勢をとると、椎間板には約2倍の圧力がかかっているのです。

つまり、立っているときよりも座っているときの方が楽に感じるのは、脚の筋力を使わないためで、負担が小さくなっているというわけではありません。

座っているときには、腰に負担がかかるともいわれます。
この理由は、座っているときにバランスがとりやすいため、不自然な姿勢をとることができるためです。

その結果、腰が後湾し、椎間板ヘルニアの原因になる場合もあります。

 

女性の大敵!猫背のデメリット

猫背は、さまざまな悪影響を及ぼします。

・見た目の印象が悪くなる
・老けて見える
・むくみやすくなる
・腰痛
・首や肩のコリ
・代謝が悪くなる
・太りやすくなる
・バストやヒップが垂れる
・二重あご
・胸やけや吐き気
・倦怠感
・不眠
・めまい
・下痢や便秘
・不安やイライラ

このように身体だけでなく、精神面にもデメリットがあるのです。

これには、自律神経が関係しています。
猫背によって血行不良が起こると、脳の下垂体への血流が減少します。

下垂体は、ホルモンの分泌量をコントロールしているため、自律神経にも影響を及ぼすと考えられています。

また、内臓疾患や便秘などによって、体内に老廃物が溜まると、肌荒れやニキビの原因にもなることがあります。

美容にもデメリットが多い猫背は、まさに女性にとって天敵です。

 

猫背は脳梗塞の原因に

猫背が原因となる疾患の中でも、最も恐ろしいのが「脳梗塞」です。

脳梗塞は、脳の血管が詰まったり、脳の血の巡りが悪くなったりしたことで、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥り、壊死、または壊死に近い状態になってしまったものをいいます。

日本では、約150万人もの患者がおり、毎年約50万人が発症するとされているようです。

また、厚生労働省の「平成26年人口動態統計の概況」によると、平成26年の死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は11万4,207人で全体の9.0%を占めています。
これは、すべての死因のうち4番目と、高頻度な疾患です。

このうち、脳梗塞で亡くなった方は、6万6,058人と約5割を占めています。

脳梗塞を発症した場合、後遺症が残るため、介護が必要となる原因の第1位とされています。

また、日本の年間医療費の約1割が脳梗塞に対する治療費があるため、福祉の面でも大きな課題を持つ疾患です。

猫背が脳梗塞のリスクを高める原因として、順天堂大学浦安病院脳神経・脳卒中センター長の卜部貴夫医師は、首の骨の中を通る椎骨動脈の圧迫を指摘しています。

猫背でいつも首が曲がっている状態になると、慢性的にこの動脈が圧迫されて、脳に十分な血液が行き届かなくなります。
そうすると、脳の組織が死んでしまったり、血管が裂けたり、詰まったりして、脳梗塞になるリスクが高まるのです。

(参考:サタデープラス12月10日放送)

また、猫背による高血圧も脳梗塞の原因として考えられています。

高血圧は動脈硬化や脳血管障害を引き起こす原因ともなるものですが、これも猫背が起こす不調のひとつといわれています。
姿勢がよく、首や背筋がシャンと伸びていれば、血管は何の圧迫も受けることなく心臓から脳へ血液をスムーズに送り届けることができます。
ところが、猫背になると、前かがみで首がうなだれた格好になり、首や背筋が曲がっている状態ですから、こうなると動脈が圧迫され、血液が流れにくくなってしまいます。血液をスムーズに脳へ送るために、心臓はポンプの圧力を高めざるを得ません。その結果、血管に余計な圧力がかかり、高血圧を招いてしまうのです。
また、猫背になると胸が縮こまってしまうため、肺の働きも低下しがちになります。内臓の血液の循環が悪く成れば、高血圧が悪化するのは当然ですし、消火や栄養吸収など、本来の働きもにぶくなります。

(引用:主婦の友社『脳出血も脳梗塞も自力で防ぐ!知恵とコツ―高血圧をすんなり下げる!脳血管の破れや詰まりも解消』)

 

正しい姿勢のコツ「膝立ち」

ここまでで、猫背が体にさまざまな悪影響を及ぼすことはわかっていただけたと思います。
しかし、猫背を直し、正しい姿勢をキープしよう!と思っても、すぐに実践できるものではありません。

まず、正しい姿勢について理解する必要があります。

正しい姿勢と聞いて、多くの人はこのような姿勢をイメージするのではないでしょうか?
①背筋をピンと伸ばし、
②お腹に力を入れ、
③胸を張って、
④あごを引く

実はこれ、ほとんどの人がしている勘違いなんです。

本当に正しい姿勢とは、体に負担の少なく、もっとも楽な姿勢です。
つまり、上記のような無理に背筋を伸ばすものではありません。

正しい姿勢のコツ、それは「膝立ち」です。

まず実際に、膝立ちをしてみましょう。
膝立ちをすると、下半身が安定し、背骨がまっすぐな状態になります。

このとき、腰の筋肉を触ってみてください。
筋肉が柔らかくなっていませんか?

膝立ちをしているときは、誰でも筋肉をあまり使うことなく、正しい姿勢になるのです。

これは、膝立ちをしているとき、私たちの体重を支えているのは筋肉ではなく、骨だからです。
つまり、骨にまっすぐ体重を乗せることができれば、余計な筋肉を使わず、正しい姿勢を楽にできるというわけです。

ぜひ実践して、正しい姿勢のコツを自分の体におぼえこませましょう!

 

まとめ

今回は、猫背について詳しくご紹介しました。

猫背は私たちにさまざまな悪影響を及ぼします。
脳梗塞の原因にもなっていることを考えると、本当に恐ろしいですね…

でも、いざ良い姿勢でいよう!と思ってもなかなか難しいものです。
まずは、今日からでもすぐにできる膝立ちで正しい姿勢の感覚をつかみましょう。

毎日コツコツ実践してみてくださいね。
正しい姿勢をマスターして、脳梗塞も予防しましょう!