免疫細胞が暴走する?線維筋痛症!

男性に比べて女性に多くみられる疾患は非常に多くあります。例えば元々、骨格の作りが柔らかいために、関節や骨盤などに変形・損傷が起こったり、妊娠・出産を機にホルモンバランスが崩れて、自律神経に乱れが起こったり、マタニティブルーになるなどが挙げられます。

今回ご紹介する線維筋痛症も圧倒的に女性に発症する疾患で、いわゆるリウマチと同じ自己免疫疾患の一つです。この疾患が発症すると全身や身体の一部で痛みを感じたり、いつも疲れや倦怠感を感じたりします。

やっかいな事にこの疾患は原因・治療法がまだ確立しておらず、地道なマッサージ温熱治療痛みを和らげるしかありません。それではどのような疾患なのか詳しく確認してまいりましょう。

痛みの発生プロセスと免疫細胞


線維筋痛症
は冒頭の通り、原因の特定ができていません。名前の由来は筋肉の痛みが発生するものとなっていますが、ある専門家は痛みを感じる信号が混乱をしている、または免疫細胞の異常による自己免疫疾患などの意見があったり、それらを引き起こすのが過度なストレスによるものと捉えているようです。

では人間が痛みを感じるプロセスについて触れてまいります。痛みとは脳が発信する危険信号です。切り傷や骨折などの外傷があった時は、皮膚の痛点が感じ取り脊髄を通して脳へ電気信号が伝わり、脳が痛いと認識します、これを侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)と呼びます。

あるいはリウマチ座骨神経痛(腰の神経が圧迫されて下半身に痛みや痺れを引き起こす疾患)はなど神経が圧迫されたり、脳の勘違いで起こる痛みを神経障害性疼痛、そして昨今増えているのが原因が不明確でおそらくストレスや過度のプレッシャーが引き起こす痛みを非器質的(心因性)疼痛と呼びます。今回のテーマである線維筋痛症神経障害性疼痛非器質的疼痛に分類されます。

次に名前は知っているけれどよくわからない、自己免疫疾患についてご説明します。リウマチを始めとするこの疾患は、簡単に言えば免疫細胞が誤って自分の身体を傷つけてしまうことを指しています。

人間の身体には外から入ってきた細菌ウイルスに抵抗し、体外に排除する機能が備わっています。白血球から作られるそれらの組織を抗体とよび、反対に外から侵入してくる敵を抗原というように呼びます。

自己免疫疾患に陥ると抗体が誤って身体を攻撃してしまうことで、患部に炎症が起こり、炎症が起こると「サイトカイン」や「プロスタグランジン」といった発痛物質(痛みを引き起こす物質)がたくさん分泌され、痛みを感じるようになるというわけです。

線維筋痛症の症状と発症しやすい方の傾向

線維筋痛症の症状は人によって様々です。「やけどのようにヒリヒリする」「切り傷のようにズキズキ痛む」「焼けているように感じる」「チクチクと痛い」などなど、症状は千差万別ですが痛みが現れるということは共通しています。

あるいは重症化すると髪が皮膚に触れたり、ドライヤーを使ったり、物をつかむ、服がこすれるといったことだけでも痛みを感じるようになり、痛みの他にも疲労感倦怠感をいつも感じたり、睡眠障害やうつ病、身体のしびれこわばりなどを併発してしまうといった症状も見られます。

冒頭でも触れていますが、発症しやすいのは圧倒的に女性が多く男性の七倍近くに上るといわれています。この理由は女性ホルモンの影響によるという専門家の見解がほとんどです。男性ホルモンは10代から多く分泌され20~30代を超えると徐々に減少していくわけですが、その変化は非常に緩やかです。

しかし女性の場合、月経の影響からその前後で大きく変化する事に加え、妊娠・出産・閉経を迎えるとほとんど分泌されなくなる女性ホルモンもあるのです。特に妊娠中はエストロゲンが多く分泌され、産後はプロラクチンという母乳を出す為のホルモンが分泌されます。

この時、母体では男性の精液や胎児の細胞など、本来異物であるものを排除・攻撃しないように免疫機能を抑えるようになり、この時の抑制によって免疫細胞が弱まる、あるいは混乱を来すといわれています。

まとめ

今回は、男性よりも女性に多くみられる自己免疫疾患の一つ、線維筋痛症について記事を書いてまいりました。文中でも触れている通り、この疾患はまだ原因の解明治療法の確立が進んでおりません。

加齢に伴い、男性も女性も疾患を患う事が増え、身体の機能も徐々に低下していくものですが、男性は肥満や運動不足からくる生活習慣病を発症しやすく、女性は関節の変形ホルモンバランスの変化に端を発する病にかかりやすくなります。

また原因が不明確なので改善方法も人それぞれです。痛みが発症したら自力で治そうとは思わず、専門家に相談するようにしましょう。