気になる足の疲れやしびれに注意!脊椎管狭窄症とは?

非常に残念なことに、私たちの体は20~25歳ピークにしてやがて老化が始まります。男性であれば腕や足の筋肉が減少し、お腹の脂肪が気になりだしたり、女性であればお肌のハリや潤いが失われシミやしわが気になりだしたりすることでしょう。

更に加齢が進むと、体力がなかなか回復しない、ちょっとした運動で疲れ切ってしまう、膝や腰など負荷のかかる部分に痛みが出る、ということも。しかしここで注意したいのは、ある種の痛みやしびれは単なる加齢による身体の疲弊ではなく、何らかの具体的な疾患による場合もある、ということです。これを「年齢的なもの」と片付けて放置してしまうと、予想以上に症状が進行し日常生活に支障をきたすまでになる危険性があるのです。

そのような、加齢との見分けがつきにくい疾患の1つが、「脊柱管狭窄」です。そこでここでは、脊柱管狭窄の特徴や原因、症状などをご紹介していきます。

脊柱管狭窄とは?

脊柱管狭窄についてお話しするために、まずは脊椎、つまり私たちの背骨の造りについてご説明しましょう。私たちの背骨はご存じの通り「椎骨」と呼ばれるブロックのような骨が積み重なってできていますが、これら1つ1つの椎骨にはが開いており、これが積み重なることで1つの管のような組織を形成しています。

丁度短いマカロニを何個も縦一列に並べた状態、と想像していただくと良いかもしれません。この椎骨で成る管を「脊柱管」と呼びますが、脊柱管の中には「脊髄」という中枢神経と、腰のあたりからは脚部の神経をコントロールする「馬尾神経」とが通っており、これらの神経が、脳から与えられる信号を体の各器官に伝えて運動させているのです。つまり脊椎は、大切な神経を囲んで保護する役割も果たしているということなんですね。

正常な脊柱管には神経が何の障害もなく通るだけの余裕ある広さが確保されているのですが、加齢により脊椎に変化が起こると、幅が狭まって中にある神経を圧迫してしまうことがあります。

具体的には、骨自体の変形や椎骨同士を繋げる軟骨組織である「椎間板」の変形、また骨と骨とを繋いで関節を作る「靭帯」の緩みなどが原因で、これらにより脊柱管が狭まると、そこを通っている神経が圧迫されて司っている身体機能に異常が起こったり痛みが発生したりする、というわけです。これが、「脊柱管狭窄症」。その中でも特に腰のあたりに起こる「腰部脊柱管狭窄症」が非常に多く、その場合馬尾神経が圧迫されることになるため、足に痛みやしびれが起こったり歩きづらくなったりするのです。

脊柱管狭窄の症状は?

脊柱管狭窄は背筋を伸ばした状態で立ったり歩いたりするときにより脊柱管が狭まるため、馬尾神経が圧迫されて足のしびれや歩行困難が生じます。これは200~300m歩いただけで起こってしまうのですが、しばらく前かがみになって休んでいると症状が治まってくるため、また歩けるようになります。こうしてしばらく歩き、またしばらく休むという繰り返しが起こる症状を「間歇性跛行」と呼び、これが脊柱管狭窄の代表的な症状であると言われています。

一度狭くなった脊柱管が自然に元に戻ることはありませんが、症状が軽度であればそれ以上急激に悪化することは少ないとされる一方、症状が進むケースでは連続で歩行できる距離が徐々に短くなってゆき、更にひどくなると安静にしていても痛みやしびれがある、会陰部に違和感がある、排尿や排便がしづらくなる、といった症状が表れ、日常生活に支障をきたすまでになります。症状が軽いからといってそのまま落ち着いてくれるという保証はありませんから、脊柱管狭窄の疑いがある場合は、とりあえず診察を受けておく方が良いでしょう。

脊柱管狭窄にならないためには?


前述の通り脊柱管狭窄の主な原因は加齢による脊椎の変化ですから、これを防ぐのはなかなか難しいものがあるのですが、例えば普段から腰に負担をかけないよう注意し、正しい姿勢を保つ、腰周辺の筋肉が落ちないよう適度な運動を心がける、といったことが予防策になり得ます。一方、例え軽症でも一度脊柱管狭窄になってしまった場合、筋力を付けようとして無理にウォーキングをすると悪化してしまう可能性もあるため、注意が必要です。歩く場合には杖やシルバーカーなどを利用し、腰をかがめるようにして歩くと良いでしょう。また自転車も腰への負担が少なく痛みを起こしにくいため、移動手段として、また運動の一環としてもお勧めです。

まとめ

脊柱管狭窄は60歳以上に多い疾患であるため、丁度年齢による身体機能の低下を痛感し始める時期と重なります。このため、最初に述べた通り症状が軽い場合は特に、「ただの老化」として片付けてしまうこともあり、悪化し日常生活に支障をきたすようになってはじめて病院へ駆けつけるというケースも少なくありません。早めに診察を受ければ保存療法で軽減することも多いため、気になる人はできるだけ早く医師の判断を仰ぐようにしましょう。